進化しつづける旅路、ロマンあふれる「台三線」。

台北、桃園、新⽵、苗栗、台中の5つの県市に跨る全⻑150kmの山あいに散在する客家(ハッカ。華北地方に起源を持つ、客家語を共有する漢民族の一支流)の集落をはじめ、客家地域における閩南(ホーロー)や先住民の文化をも網羅するロマンチック台三線芸術祭。それは、客家文化の復興を目指したムーヴメントであり、台湾の田園地域と出逢う、最も味わい深くてロマンあふれる旅路である。風に吹かれ、沿道に広がる風景に誘われて行き着いた町々に横たわる、長い時間の蓄積のきらめきや禊(みそぎ)のようなひとときに浸かれば、きっとそれだけで身も心も洗われてくる。

篳路藍縷(ひつろらんる)という言葉を顕に体現するかの如く、「台三線」とは台湾が歩んだ困難な道のりそのものであり、歴史の縮図でもある。「内山公路(ネイシャンゴンルー)」とも呼ばれる山と平野の間を横切る台三線は、かつて台湾茶や樟脳(しょうのう)を運ぶ重要な産業道路で、世界経済と接続するための輸送ラインだった。また山道や古道を縦横無尽につなぐ「樟之細路(ヂャンヂーシールー)」を辿れば、いにしえの人々の足跡と今につづく細道が再び重なり合う。山腹を貫くように穿たれる水路の「穿龍圳(せんりゅうしゅん)」は、流れに逆らって水を汲みこの地を潤してきた、先人たちが力強く生きた証でもある。客家を筆頭に、先住民のタイヤやサイシャット、そして統治者であった日本————。街道を境界に時には対立し、時には混ざりあい、多民族の衝突と併存が幾度となく繰り返されてきた。

そして人物・動植物・文物・産物といったあらゆる物が、山々の回廊に沿って点在する客家の小さな村々の大切な景観として育まれてきた。ひとたび台三線の田園地帯に分け入れば、きっと最も客家らしい滋味深い体験を味わい、尽きることのない物語に耳を傾けることとなるだろう。

固有の文化・生態系・産業を再編しながら、暮らしに根ざした新しい旅のあり方を手繰り寄せ、若い人たちが返ってくるための地域づくりに寄与し、客家文化の伝承と現代的価値の創出につなげてゆく。

芸術祭という方法を介して、「台三線」の沿道で花ひらいた風土のエスプリを掬い上げるかのように、国内外のアーティストと地元の人々が一体となって物語のつづきを展開し、共創する。そんな当季のサイトスペシフィックな作品の数々を、ぜひゆっくりとご体感ください。

さぁ、ロマンチック台三線芸術祭へ足を伸ばしてみよう!

Back