ファラビボ
ファラビボ(Falabidbog)とは、客家語で「彩りが多く美しい」を表す言葉である。
原住民との共生と衝突によって独自の客家文化とランドスケープが生まれた台三線。山に沿った険しい生活条件は、客家の人々の勤勉さ、我慢強さ、うちに秘めた気高さをも育んできた。そして奇しくも僻地という場所が、台三線沿いの往時の客家の古き良きものや文化を守り伝えてきた。幾千の春風と秋雨を経て、いま文化の種が静かに芽吹こうとしている。
時は流れ、台三線にみる客家の暮らしやそのあり方も常に変化を遂げてきた。奥まった地勢がタイムカプセルとなって、客家というローカルの個性をありのまま留めている。それだけでなく、客家のエスプリが富んだ様々な新しい表現も同時に生まれている。例えば、客家人の茶商一族の物語を描いたドラマ「茶金(ゴールドリーフ)」、個性的なサウンドの客家ロックなどがあげられる。脈々と受け継がれてきた客家料理、そして山々に生息する動物たちと共に、森林を切り拓きながらふる里に生きる若者たち――。のどかだった台三線は、緩やかながらもこれまでと異なる客家の風景へと変貌しつつある。
ロマンチック台三線芸術祭は、そんな客家のほとばしるエネルギーや多様な文化が豊かに合わさった声を伝える祭典であり、客家文化をステレオタイプに解釈するのではなく、現代的なクリエーションやプラットフォームの力を結集し、新しいアプローチで伝統を昇華させ、客家理解につながる新しいチャンネルを拓くためのフェスティバルである。「芸術/アート」「設計/デザイン」「食文化」といった3つの大きな分野をクロスオーバーさせ、想像を超えた客家の多元かつ多彩な解釈と魅力を、幅広く紹介し発信する。
5つの県・市と17の町(郷・鎮・市)、総延長150キロにもなるロマンス台三線芸術祭は、65日にまたがって、50人以上のアーティストと21組のデザインチームの手によって生まれた90を超える作品群が、国内外より一堂に会する。それだけでなく、45以上の各地レストランによる30を超える客家の特別メニューがならび、アートにふれる60のローカル路線、五官を揺さぶる100以上の体験イベントがさらに華を添える。従来のルートとは異なる客家の新しい道を切り拓き、実験と現実、協調と対立、流行と古典といった両義性の間で、まだ見ぬ客家の無限のイメジネーションと主体性、文化的景観を創出し、広く伝えてゆく。
この夏、客家の山道に足を踏み入れ、さぁ台三線が放つファラビボ(Falabidbog)と出会う旅へ出かけよう!